前回のブログでクレーマーから第二の母にまで登り詰めた若松先生のお話をさせていただきました。
今回は親身になってくれたおじさんのお話をしていこうと思います。
お店がオープンしてからわりとすぐに60歳前くらいのおじさんでなにが気に入ってくれたのかわかりませんが毎週のように土日にご飯を食べに来てくれる方がいらっしゃいました。
今だから書けますが、カウンターに座り、俺は大手企業の管理職だ。マンションを持ってて家賃収入もある、若い女の子ともデートできるんだ!といったようなどうでもいいようなしょうもない話をする人でした。
しかし、そのときはまだとにかく一人でもお店のファンを作らないとダメだー!という思いからそんなお話を聞いていました。
しばらくすると身の上話だけでなく、今度はメニューの字が小さくて見えないと意見をもらい、まぁ確かに歳のいった方には見にくいのかなぁと思い大きい字体にメニューを刷新しました。
すると
おじさん『このフォントはないやろー!』
僕『そうですかぁ。すいません。でも変えたばかりなんで当分、これでいきます』
おじさん『わかってないなー』
と。
ある時は
『お前の店わかりにくいからもっと看板出したらどないや?』と意見を頂いたのでまぁ確かに地下のお店だし看板は多いに越したことはないのかなぁなんて思い看板を増設。
しかしこれにもご意見が。
おじさん『勝手に増設するとは何事や!俺がアイデア出してやったんだから俺に意見を聞くのが筋ちゃうか!?』
と。
その後もメニューの内容がどうだとかお店のレイアウトがどうだとかそもそも客層がどうだとかなんだかんだと色々と意見をしてくるようになっていったのです。
そして決まって『俺はおまえたちの為を思って言ってる。いい店もたくさん知ってるしそこから俺が学んだことをおまえたちに教えてやってるんだ。』と言うのです。こういう人、皆さんの周りにもいませんか?笑
とにもかくにも正直、めんどくさくなってきてました。笑
でも面と向かってなんと言えばいいのかわからなかったのでどうしようかなぁと悩んでいました。
そんなときです。
あの第二の母、若松先生がケーキ作りを教えにきてくれていた時にそのおじさんが現れたのです。
僕は若松先生とマンツーマンでケーキ作りをしており、料理人の相方がおじさんの相手をしていました。そしていつものごとく『この店はどうだ!これがダメだ!』と意見をしていたのです。
すると。
ケーキ作りをしていた若松先生が僕に『あのおじさんは何者なん?この店にとって大事な人なん?』と僕に聞いてきました。
僕も『いや。いつも店のダメなところを指摘してくれるんですが正直、もうめんどくさくて。。。苦笑』
そういうと。
第二の母、若松先生は『ちょっといいですか!?』と料理人とそのおじさんの間に入っていきました。
『あなたホントにこのお店が好きなんですか!?さっきから文句ばっかり言って。こんな狭い店内でワーワー騒ぐあなたの話が嫌がおうにも耳に入ってくるんですよ。この店が好きで来てくれるお客さんもあなたみたいな人がいたらこなくなりますよ。若い子達だから人生の先輩として指摘もけっこうですがちゃんと場を考えてお話ししてあげてはどうですか?』
まさに一蹴。
それからそのおじさんはお店には来なくなりました。
若松先生からは『自分にとって自分の店にとって本当にプラスになると思う人を大切にしなさい。それは態度がいいお客様、悪いお客様という意味じゃないんやで。接客業なんだからしっかりと見定めれないとダメ』とご指摘をいただき『まぁあのおっさんが来なくなった分くらいは私が十分、還元してあげるから安心して!』と言われました。
これも今、思えばホントにいい経験でした。
若松先生もそうですが僕のお店には年配の方もおおく、色々と指摘してくれる人も多かったんですが愛のある方は『参考にしなさい』といろんな飲食店に連れていってくださったり、一緒に仕入れに行ったり、ただただ気晴らしに飲みに連れていってくれたりとそういう指摘を下さいました。
つまり口だけじゃなく行動で示してくれました。
このエピソードがあってから僕も自分や自分のお店を愛してくれる人だけを大切にしようと考えるようになりました。
ですので入店をお断りするお客様もいらっしゃいましたし、出入り禁止にしたお客様もいらっしゃいました。
それはお店のためにならないからです。
一昔前にお客様は神様だという通説ができ、サービス業はいかにお客様の要望に応えられるかみたいな風潮がありました。
しかし、それではダメなんです。
なにも気難しい頑固一徹の寿司屋の大将みたいになれとは言いません。
今、茶の湯を勉強していてなおさら思うんですが茶の湯というのは亭主がお客様にお茶を振る舞うのですが招待されたお客様もしっかりとした礼節を持って茶の湯を楽しむのです。
だからこそ、亭主がお客様のために選んだ茶器や掛け軸、お花など細やかなところにも目がいき、亭主のおもてなしの心を感じることができるんだと思います。
亭主が妙に気を使うのもダメだし、招かれたお客様もなんだか堅苦しいなぁと感じるのもダメ。
僕はこれを目指したのです。
別に強気でもなかっし、そこまで厳しい線引きをしていたわけでもないです。僕自身、わりと許容範囲は広いと自負していたところもありましたので。なので多種多様な濃い人たちがうちの店には多かったです。笑
でもあぁこの人は他のお客様のためにならないな。僕のため、お店のためにならないな。と判断したときにははっきり言うようになりました。【もう来てもらわなくてけっこうです】と。
ここでも第二の母、若松先生には返しても返しきれないほどの恩ができました。
お店を始めたばかりの頃はほんとにたくさんのお客様に来てもらいたいが一心で誰にでもいい顔をしがちになります。しかし、本当に大切な人を見極めないと商売はうまくいかないです。サービス業、接客のプロなんだから見極めれるようにならないとダメです。仕事をサボってるのと同じです。
だからといって殿様商売になってもいけませんからね。そういうお店も何件も知っています。
何でもそうですが優しい言葉をかけてきたり、いきなり親身に話を聞いてくれたりする人は信じたらダメですよ。笑
プロなんですからしっかり見極めてくださいね。